ピクトグラム&コミュニケーション>ピクトグラムについて



 ピクトグラムデザイナーの詩


ピクトグラム 
〜リュディ・リュエッグ〜 


ピクトグラムは絵である。

言葉のない絵である。

タイポグラフィーを伴わない。

世界中で通用する 

人が理解できる絵である。

どの国から来た人にも 

どんな言葉で話す人にも 

道案内の役に立つのがピクトグラム。

状況を理解するのにも役立つ。 

適切な行動をとるにも役立つ。

ピクトグラムは規律を与える。

ピクトグラムは混沌となりがちな空間に秩序を与える。

・・・

Pictograms
〜 Ruedi Ruegg〜

Pictograms are pictures

Pictures without words.

Without typography.

Pictures that people understand.

Worldwide.

Wherever they may come from.

Whatever language they may speak.

Pictogram help to find the way.

They help to understand a situation.

They help to do the right thing.

Pictograms organize.

Pictograms create order in often chaotic world.

・・・



■最初のピクトグラム
 
 「ピクトグラム」"pictogram, pictograph"*は「絵文字」「絵単語」などと言われます。

  ピクトグラムは人類最初の絵として知られるフランスのラスコーやスペインのアルタミラに代表される洞窟壁画にその起源を辿ることもできます。もしかしたら、現代人の祖先であるホモ・サピエンスが言語の異なるネアンデルタール人と壁画を通じてコミュニケーションをとったかもしれません。このような絵は美術の起源であると同時に、異文化をつなぐコミュニケーション手段としても原型と言えるようです。


 
アルタミラの壁画


  よく知られているように、こうした壁画や絵は象形文字*を生み出し、永い時間を経て単純化され表意文字に進化してきました。一方、文字に向かわず絵の原型として永い間人目に触れることのなかった壁画は、まるで現代において、コミュニケーションの道具=「ピクトグラム」として蘇えったようです。



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 日本における家紋のように、 こうしたデザイン技法は様々な時代と場面で使われてきましたが、最初に具象として体系的に利用したのは、絵文字のパイオニアといわれるオットー・ノイラート*です。彼はウィーンの展示館の運営のために一般の市民にも分かりやすいアイソタイプ"ISOTYPE"と呼ばれる絵文字体系を作り出しました。

ISOTYPE (International System of Typo-graphic Picture Education)
組み合わせで異なる意味を表す新たなピクトグラムが生まれる。*

 要素による組み合わせはこのサイトでのピクトグラムでも生かされています。同じ図案の流用は、ピクトグラムの本質である単純化という手法そのものが可能としていると言えます。



*ピクトグラムデザイナーの詩:「ピクトグラム&アイコングラフィックス」(P・I・E BOOKS)より。



ピクトグラム&アイコングラフィックス 2 (2)

*リュディ・リュエッグ氏: 1961〜1963
ロゴ、ピクトグラム、道案内表示システムなどを手がけたスイス出身のデザイナー。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

*Wikipedia:
→"Pictogram"
→[ピクトグラム














*象形文字:絵から成立したとみられる表意(語)文字の総称。エジプトのヒエログリフ、中国の甲骨文字など。


*オットー・ノイラート:1882-1945 オーストリアの哲学者。絵文字は彼の妻 Marie Neurathが描いた。 






















*・・生まれる:
「ピクトグラム[絵文字]デザイン」太田幸夫 柏書房p83

 
■案内用サインの歴史

 日本でのピクトグラムの認知は1964年の東京オリンピックが最初となります。勝見 勝氏*をリーダーにしてオリンピック全体のデザイン計画がなされ、世界から高い評価を得ました。その成功はその後のオリンピックに「絵ことばの国際的リレー」として引き継がれていきます。

1964年 東京オリンピックの競技案内用ピクトグラム*

  当時、全ての競技をシンボライズした斬新なピクトグラムに心魅かれた人は多かったのではないでしょうか。



 1970年には「男女」のサインが大阪万国博覧会にトイレのサインとして利用されました。これが「トイレ」のサインであることを理解できる人は少なく、その横に「便所」と張り紙がされた*、という話があります。今では想像できないようなことですね。
  トイレの案内用サインとして男女のピクトグラムが社会に浸透するまで約10年がかかったようです。案内用サインのルールが社会に浸透する時間でもありました。


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  最近は、コンピュータの分野から広がったアイコン”icon”という用語も一般化し、多くのデザイナーがピクトグラムを含めて様々な種類のアイコンを制作するようになりました。デジタル技術の進歩やドローイングソフトの普及に伴いデザイン性の高いものが数多く制作されています。



1998年 長野オリンピック競技サイン

 
 また、個性的で斬新なデザインも多くなってきました。 その例として長野オリンピック(1998)の流線型の競技サインがあります。それらはグラフィックデザインとしては美しいかもしれませんが、残念ながら誰もが受け入れられる公平なUDサインとは言えません。


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 ピクトグラムの長所のひとつは「主張しない」「訴えない」ことから生まれます。街角の広告や看板、企業のCIシンボルのようには目立たない、目立たせないことが重要です。本当に必要な時に自然と目に入ってくる。いわば黒子の役割を果たすのが優れたピクトグラムです。「可愛いさ」や「カッコよさ」を排除して、見た人の感情を動かさない情報的なデザイン(informative design)が求められます。
 
 それは文字そのものが主張をしないことと同じことです。ピクトグラムも絵ですのである程度情緒に結びつくことからは逃れられませんが、制作の原点に「主張しない・させない」という点を置かなければなりませんし、基本となります。このことは繰り返して強調されるべき重要な点です。

  街中で用を足したくなって我慢できないときに、それまで気にもとめなかった「男女」のサインが俄然として目に飛び込んできたという体験は誰にでもあるでしょう。 逆説的ですが、普段は見過ごすような、目立ったデザインでないからこそ、場に応じた機能を発揮するということです。


 

 

*勝見 勝:1909-1983
国際的デザイナー 評論、編集、コーディネートと幅広く活躍。

 

 

*・・用ピクトグラム、他ピクトグラム:「ピクトグラムのはなし」 太田幸夫 日本規格協会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*・・用「便所」と張り紙がされた:「ピクトグラムのはなし」太田幸夫 日本規格協会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
■ピクトグラムの構造とデザイン

 

 誰でも知っているピクトグラムの代表のような「非常口」のサインです。このサインは、デパート火災の惨事が契機となって作られました。それまでの文字(漢字で「非常口」)での案内表示が不適切とされ、改善されました。公募デザインが元になっていますが、人の形、地と図の空間バランスなど、あらゆる点で教科書のようなピクトグラムと言えます*

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 ピクトグラムのデザイン構造の基本には黒地に白図があり、これは光の反射率でいうと1:16になります。四角形の黒地をベースに、図の方は線を極力排除し面画を主とし、対象を極限の形にまで単純化します。この二つ、輝度差と単純化がピクトグラムと呼べるデザインのポイントであり、同時に認知のためのアドバンテージになります。

  白図は浮き上がって目に飛び込んで来るように感じます。それは輝度差の働きから来るものです。これこそが瞬間的な分かり易さを生む第一の要因になっています。優れたピクトグラムとは、見た瞬間にあなたの脳の中で意味・概念と素早く、そして自然に結びつくでしょう。 脳は同定化、概念化を計ろうとします。良く知っているものであればあるほどパッと見て解るものです。

ピクトグラムの心理的な三次元構造*

 また、四角という形の地は背景、キャンバスとしてのみならず、形そのもが人工的であり、絵文字としての存在を規定し心理的に安定します。黒色はいわば闇(やみ)であって、その深淵から事物が概念として生まれるところと言えます。黒は何もないという意味で、逆に言えば何かが生まれる所として最適とも考えられます。

  ユニバーサルであるべきピクトグラムの制作にあたっては、ピクトグラムのこのような生理的かつ心理的構造と特性を理解した上で、個性や時代による流行的なデザイン性をできるだけ排除することを念頭におくことが必要です。

 さらに、コミュニケーションのためのシンボル群という視点からは整合性や統一感も要求されます。文字で言えばフォントの種類のようなものでしょう。「没個性」「非主張性」が重要であるとともに、絵である限りは個人によるデザイン性が排除できないことも事実です。ゴシック体と明朝体が混在しない程度の整合性が求められるのです。

 最大公約数的な図をもち、確固とした地と図の構造に支えられたグラフィックシンボル、それがピクトグラムです。 

 

*・・と言えます:「図記号のはなし」村越愛策 日本規格協会 他に詳しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*ピクトグラムの心理的な三次元構造:
「視覚シンボルの心理学」 清水寛之編著(ブレーン出版) p21- PICシンボルの視知覚特性 

 
■サインとコミュニケーションのピクトグラム


サイン、アイコンへの利用

 絵の卵、原型であり空気のようでもあるピクトグラムは、上記のような特性ゆえにさまざまな利用の目的に適います。これまでは駅、空港など公共施設の案内用サインとして認知されてきましたが、これからはホームページやソフトウェアのアイコン*、機器・機械のマニュアル、各種イベントでの利用、UD(Universal Design)や情報デザインなどの分野への利用も広がっていくでしょう。

 下記はオフィス制作のシンボルを使ったサイン、アイコン利用の例です。ギャラリーにはないピクトグラムです。詳しい説明とピクトグラムデータは「ピクトグラムの利用と普及を考える会」HPでご覧いただけます。リンクのあるものは無償ダウンロードも可能になっています。

・下記の例はギャラリーにない新しいピクトグラムです。


 イベント等のサイン: 国際こども図書館(イベント展示利用例)
 
              「読書の楽しみをすべての子どもたちに」




 ■消防署内のサイン(施設内利用例)


ピクトグラム 仮眠室  ピクトグラム 無線室
仮眠室      無線室




 ■ソフトウェアの操作用アイコン(メディア利用例)

    オンラインワープロソフト用アイコンへの利用 → 「SoloDox」


 
 ■特殊なサイン:大阪府立金剛コロニー
(施設内利用例) 



 ■「桜」ピクトサイン
福島県地域づくり交流促進事業(案内サイン利用例) 



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 他、アイディア次第では色や加工技術を用いて、高い情報性を保ったままでの
アイコン利用ができます。文字に頼らずに対象を示したい時に便利です。下のアイコンは当サイトのシンボルを元に作ったアイコンです。



小さくしても、ピクトグラムは威力を発揮します。単純化を進め色を付けた干支を並べてみました。(人・動物>陸の動物104〜空の動物・他106より)







Windowsのアイコン風に「クール」に
(「時計」302016 「Tシャツ」303013 「救急車」401012)





 


加工をしてもギリギリ理解可能?
(「家族」110003)



 アイコンの制作に当たって、最初にピクトグラムを作ってみることは、情報とデザインを分けた上で制作するということであり、重要なことだと考えられます。





コミュニケーションへの応用

 そして、新しい次元へステップアップする時代がやってきました。これまでの単体での役割から、複数個を使ってのコミュニケ ーション・システムへの利用です。

 ある意味それはピクトグラムが脇役から主役へシフトする時代とも言えます*

 サインとしての一方向のコミュニケーションから、双方向のコミュニケーションシステムへの進化です。ピクトグラムには言語を超えた全く新しいユニバーサルなコミュニケーション手段になる可能性があることを感じ取って頂ければ幸いです。

 言語にハンディキャップのある人のコミュニケーション手段として、また外国でタクシーに乗って病院へ行きたいときに指し示す絵単語として、など、社会が成熟化して行く中でハンディキャップのある人々は社会参加を求めます。また、世界中で人の行き来とやり取りが増すにつれ、このようなコミュニケーション手段が求められる時代となってきます。


お腹が痛い  お医者さん どこ?

「お腹が痛い」のジェスチャーは可能ですが、「医者」は難しいのでシンボルが役立ちます。
 


お腹が痛い 薬が 欲しい
同様に「薬」は難しいのでシンボルが役立ちます。 


このような目的で、日本で最初に作られたピクトグラム(PIC
*シンボル)の例です。


日本版PICシンボル(1998)*
(c)Hayashi Fumihiro


 これまで案内用のサインとしては目にすることのなかったピクトグラムばかりです。これらは教育基本語彙他、数多くの資料を基に生活語彙という観点からデータベース化された語彙群より選ばれ、約1年を掛けた林によるシンボル群です(高知デジタルスタジオ制作)。語彙レベルとしては3才の言語能力をひとつの目安としています。



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 最近の新しい試みとしては動画もあります。動詞の概念学習などさまざまな利用方法が考えられます。商品説明のマニュアルとして、時々CDやビデオなどでがありますが、同じような目的での利用も可能でしょう。

 



 シンボル研究のための実験的な試みですが、ピクトグラムデザインをベースに発展させたアニメーションで手話(「聞く」)の動きを表現してみました。




「聞く」ピクトグラムアニメーション











  *・・のアイコン オリジナル絵本の店ピクトゥス


国際こども図書館での利用例ホームページ ⇒読書の楽しみをすべてのこどもたちに

「日経レストラン」でのJIS絵記号紹介⇒バリアフリー化〜繁盛への道































































































 































*・・・とも言えます。:
「ピクトグラムから新しいコミュニケーション社会へ」林 文博 第3回ニューテクノロジー懸賞応募論文 1997





























*PIC:
1980年にカナダのS.C. Maharaj氏によって始められた言語にハンディのある人々のためのコミュニケーション方法。そのために使われてきたシンボルがPICシンボル。








*日本版PICシンボル:高知県「生命(いのちの基金」助成金によって制作された。当オフィス代表の林による約600個のピクトグラム。

 

*語彙のデータベース:第38回日本特殊教育学会で発表「日本版PICシンボルの追加語彙選定に関する検討」

 

*動画:gifアニメーション100個が五大エンボディ鰍謔阡ュ売。制作は当オフィスによる。

 

 



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