ピクトグラム_カバー

 ここでは、ピクトグラム・イディオグラム・コミュニケーション(PIC)について紹介し、さらに精緻で有用なシステムとして展開していくための土台について説明します。オフィスではPICS(Pictogram Ideogram Communication System:仮称)と呼ぶ、正しくBlissや太田が目指した世界共通のコミュニケーションシステム作りを目指していますが、その基本的な考え方ですね。


コミュニケーションシステムの構築

 
  JIS絵記号の313個とそれを含む当サイトの約1,500個の語彙はオフィスで独自に作られ、現在も更新されているデータベースから選択されています。



語彙数と会話の了解度

単語のグループ
英語
仏語
日本語
最初の1000語  80.5%  83.5%  ≒60%
2番目の1000語  86.6%  90.4%  
3番目の1000語  90.0%  93.8%  ≒75%
4   ”  92.2%  94.7%  
5   ”  93.5%  96%  
合計 5000語  93.5%  96%  
               (岩淵悦太郎「現代日本語」より一部改変)


 生活語彙という視点からは3,000語がひとつの目安です。幼児が基本的な会話能力を獲得する3〜5才という年齢、また上の表「語彙数と会話の了解度」等を参考にしています。しかし、多くの意味をひとつの単語で担う言語と、絵である視覚シンボルは意味の担い手として本質的に異なり、視覚シンボルのほうがより多くを必要とすると考えられます。


  次にカテゴリ分類です。視覚シンボルのカテゴリ化は難しく、ある程度は恣意的にならざるを得ません。しかし、できるだけ科学的かつ普遍的であるべきです。ここではヒトの発達の時間と空間という視点から分類しました。



PICとJIS絵記号のカテゴリ



 先ず物事の名称である名詞を5つに分類しました。5という数は短期記憶の数であるマジカルナンバー7のマイナス2に当たります。一般に誰でも憶えられ操作可能な範囲と言われています。これら名詞以外の形容詞や副詞などが「600様子・動き」(四角い紫)になります。

 この分類方法によって全ての概念を6つのカテゴリに分けることができるようになりました。過去にはない画期的な分類方法です。

 
































































短期記憶の数:ウィキペディアWiki



  視覚シンボルによる支援 

 
PiCマーク *当サイトののシンボル。健常者が差し出して共に目的のシンボル(意味=イメージ)を探します.



  マハラジ氏が始めたPICの原理は、ある状況で絵が差し出されれば、指差しでコミュニケーションが図れるというものです。それをシンボル化したのがこのサイトのマークです。健常者であるコミュニケーションの受け手は、レストランでのウェイトレスのように相手が伝えたいものを責任をもって知ることが求められます。これがコミュニケーション支援の基本的な態度となります。

 しかし、PICシンボルは魔法のカードでもなければ、全ての言語障害児・者がすぐに使えるわけでもありません。言語に発達の遅れのある人々、また認知力にハンディがある人々についてはこのシステムが使えるかどうかを判断する必要もあります。

 すなわち、シンボル絵もしくは意味そのものの難易度と、言語障害児・者の認知能力の二つの大きな要因が掛け合わされて使えるかどうかが決まります。従って、細かい段階的な評価に基く導入が必要です。一方で、使えるシンボルは固定的なものではなく、学習によって利用できるようになるシンボルも沢山あるでしょう。

 実際の場面での利用方法についてはPICの事例*を参考にして下さい。またコミュニケーション方法として生活への導入は、言語聴覚士などのAACの専門家による指導が不可欠です。成人の失語症も同様ですが、定着にはリアルな場面での繰り返し訓練が必要となります。

 

 





指差し:
通常乳児期の一歳頃に獲得する。




















 

世界でのPICの普及





 PICは現在、カナダ、スウェーデンはもとより欧州の多くの国々、南米ブラジルなどで利用されています。そして各々の国の文化に必要なシンボルを追加しながら発展させています。

 PICの生みの親であるマハラジ氏は、このコミュニケーション方法の発案者であることに誇りをもっており、自由な発展を尊重したため、これまで多くの国々で広く浸透してきた面があります。

  日本では氏の協力を得て、日本PIC研究会がスウェーデンシンボルの利用許可を得たことが普及の弾みとなりました。そして当オフィス林による日本版PICシンボル約600語の開発(2001)が普及を促しJIS絵記号化に結びつきました。

 マハラジ氏はPICTOCOM INTERNATIONAL(1996)を設立し、PICの世界標準化を目指し、国連へのPICシンボルの利用の提言など、積極的な活動を行っています。


Pictocom Internationalホームページ画像
Pictocom International

http://www.pictoworld.com/



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
PICS(Pictogram Ideogram Communication System)



 当オフィスの林は第3回国際ユニヴァーサルデザイン(UD)会議(2010)で、PICを発展させた視覚言語システム(「ピクトグラムを利用した視覚シンボルコミュニケーションシステムの提言)を提案しました。これはサインとしてのピクトグラム利用と文法をもつ人工言語までをひとつに捉えたシステムです。世界中の誰もが短時間の学習でコミュニケーションを図れるシステムとして考えられたものです。このシステムの実現のために向けて進んで行きたいと考えています。

 FaceBookページではこのPICSの考え方に基いた新しいピクトグラムや人工言語についてのアイディアなどの記事をアップしています。どうぞ、こちらもご覧ください!