ピクトグラム&コミュニケーション>PICシステム

 PICが、ピクトグラムデザインである以外に、他のシンボルコミュニケーション方法より優れていると考えられる理由として、膨大な語彙資料に基づくデータベース作成とそれに加えての言語聴覚士らによる吟味された語彙選択があります。ここでは語彙選定の背景とPICの基本的な事柄について説明します。


語彙の選択 〜 何をシンボルにするか  
 



 日本でのPICのシンボルはカナダからの400語と日本文化に応じた24語を加えた424語で1996年にスタートしました。 しかし、400語が欧米文化ベースの語彙となっていたため、日本では不適切だと考えられていました。そこで、翌97年に語彙内容の見直しと増量を目的に「教育基本語彙」、「日本語個人教授法」、「Word by Word 」他、「ST10名からの聞き取り調査」など14点の資料より2,200語がリスト化されました。

 そして、2,200語より約600語を選択、1998年にシンボル化したのが日本版PICシンボル(J-PIC)です。 これで合計1000語あまり*となり、これをベースに「PIC実践用具」(ブレーン出版)とPIC DIC v.2(五大エンボディ)が リリースされました(2001年)。

 その後、2002年には新たな10点の資料を追加し、約17,000語の新しい語彙データベースが作られました。データは、重複や類似語彙を削る、福祉関連の語彙の追加など妥当と考えらる「7つのステップ」を踏んで、最終的におよそ3000語に絞込まれました。従って、PICの語彙データベースとその語彙選択については極めて洗練されたものと言えます。

  JIS絵記号の313個とこのサイトでの約1,500個*はこの3,000語から選択されています。
カナダ、スウェーデンのシンボルに頼ってきた語彙の体系も日本文化や日本語を基本にしたものになりました。基本的な語彙での漏れはほとんどないと考えられます。

語彙数と会話の了解度

単語のグループ
英語
仏語
日本語
最初の1000語  80.5%  83.5%  ≒60%
2番目の1000語  86.6%  90.4%  
3番目の1000語  90.0%  93.8%  ≒75%
4   ”  92.2%  94.7%  
5   ”  93.5%  96%  
合計 5000語  93.5%  96%  
               (岩淵悦太郎「現代日本語」より一部改変)


 生活語彙という視点からは、この約3,000語がひとつの目安であり、シンボル数も3,000語へ増やしていく予定です。ちなみに数字は、あくまで指標です。幼児が基本的な会話能力を獲得する3才という年齢、また上の表「どれだけの単語を覚えれば、どれだけの会話ができるか」*が参考になっています。もちろん、動詞に代表されるように、多くの意味をひとつの単語で担う言語と、視覚シンボル化された「語彙ラベル」としての単語は本質的に異なりますので、その点を考慮しなくてはなりません。



































*・・1000語あまり:
第38回日本特殊教育学会「日本版PICシンボルの追加語彙選定に関する検討」







*・・約1500個:エクセルファイル 無償供与可(ご希望の方は問い合わせメールより「語彙データベース希望」としてお申込み下さい)























*・・・会話ができるか」:「現代日本語」岩淵悦太郎 (筑摩書房 )

 
ピクトグラム・イディオグム・コミュニケーション (PIC)の方法

 
PiCマーク *健常者が差し出して共に目的のシンボルを探します.



  PICの原理は、ある場面・状況で選択肢として実物や絵が差し出されれば、指差しでコミュニケーションが図れるという単純なものです。それをシンボル化したのがこのサイトのマークです。差し出す人はレストランでのウェイトレスのように相手が伝えたいものを知ることが「仕事」です。同様に、コミュニケーション健常者は弱者が伝えたいイメージを知ろうと努めなければなりません。これが求められる基本的な態度となります。

 しかし、PICシンボルは魔法のカードでもなければ、全ての言語障害者がすぐに使えるわけでもありません。言語に発達の遅れがある人々また認知力にハンディがある人々についてはシステムが使えるかどうかを、判定する必要があります。その方法「評価と学習方法」*を示します。

 すなわち、言語障害児(者)へのAAC(拡大・代替コミュニケーション)としては、段階的な評価に基く導入と学習が必要となります。PICシステムの導入部分としてご紹介しておきます。PICの開発者であるMaharaji氏は「評価と学習方法」の(4)練習1の段階をクリアしたシンボルを利用可能なシンボルとしています。

 臨床場面や生活での利用方法については事例*を参考にして下さい。また実際のコミュニケーション方法としての利用と生活への導入は、AACの専門家による指導が不可欠です。成人の失語症も同様ですが、定着には訓練と生活場面での繰り返しが必要となります。
 

 











*・・その方法:

「視覚シンボルによるコミュニケーション 日本版PIC」(ブレーン出版)















*・・ は事例・・:

詳しくは「視覚シンボルでコミュニケーション 日本版PIC活用編」

 
PICシステムの実際

 これまで言語障害のフィールドでは、PICの実践報告を多くの臨床家が研究会、学会などで行ってきました。書物としては「視覚シンボルでコミュニケーション〜日本版PIC活用編」(藤沢和子編著 ブレーン出版)が、PICシンボル利用を中心とした知的障害、自閉症、失語症、日本語教育など具体的な20余りの報告をしています。各臨床家の創意工夫が随所に見られる実践的な報告をまとめた優れた一冊になっています。

 上記書籍よりの抜粋が主ですが、PICが実際に役立った、機能したと思われる象徴的な場面などを当オフィスの代表で言語聴覚士の林が北海道新聞のコラム「絵記号って何?」に書きましたので紹介します。


    北海道新聞(生活面)連載「絵記号って何?」より
  (2005年10月〜2006年3月まで連載、後半12回〜22回)
 
*第1回〜11回(デザイン原則について)まではこちら






第 12回
第 13回
第 14回
第 15回
第 16回
第 17回
第 18回
第 19回
第 20回
第 21回
第 22回
新聞ピクトをクリックするとコラム記事が読めます。

 PICシステムの臨床報告はまだ十分ではありませんが、方法論としてはPICも他のシンボルコミュニケーションも基本的に同様です。広く一般社会にこのコミュニケーションシステムが認知されるには、他の方法も含めて、今後も多くの報告が必要でしょう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
世界でのPICの普及




 PICは現在、カナダ、スウェーデンはもとよりポルトガル、ブラジルなど多くの国での利用されています。そして各々の自国の文化に必要な語彙シンボルを追加する形で発展させています。

 PICの発案者であるMaharaji氏は、このコミュニケーション方法の発案者であることに誇りをもっており、諸外国におけるPICの開発、改良、普及を制限せず、自由な発展を尊重したため、今日まで多くの国々で広く浸透してきた面があります。

  日本では氏の協力の下、日本PIC研究会の藤沢氏がスウェーデンへも渡り、そこで制作されたシンボルの利用許可を得てきたことが日本における普及の土台となりました。そして当オフィス林による日本版PICシンボル約600語の開発が臨床フィールドでの拡がりを促し、またJIS絵記号化に結びつきました。

 現在、Maharaj氏はPICTOCOM INTERNATIONAL(1996)を設立し、PICの世界標準的な視覚言語を目指して、国連へのPICシンボルの利用の提言など、積極的な活動を行っています。

Pictocom Internationalホームページ画像
Pictocom International

http://www.pictoworld.com/


 当オフィスの林は第3回国際ユニヴァーサルデザイン(UD)会議(2010)で、PICシステムをさらに発展させた視覚言語システム(「ピクトグラムを利用した視覚シンボルコミュニケーションシステムの提言)を提案しました。これはサインとしてのピクトグラム利用に始まって、文法をもった人工言語までの重層的なシステムです。世界中の誰もが短時間の学習でコミュニケーションを図れるように考えられたものです。今のところはアイディア段階ですが、将来、HP上で実現させたいと考えています。








   


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